五十肩と鍼灸|脇の下の「極泉」で肩の痛みと可動域が改善する理由を解説


【1】五十肩の痛みでお悩みの方へ


五十肩(肩関節周囲炎)でお悩みの方へ。 五十肩の痛みや可動域の制限には、鍼灸・ツボ押し・セルフケアが効果的です。

夜中に肩が痛くて目が覚める。 腕を上げたくても途中で止まってしまう。 着替えや背中に手を回す動作がつらい。

1年、2年と続く肩の痛みに「もう治らないのでは」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、五十肩の痛みに深く関わる「小円筋と大円筋の癒着」というメカニズムと、脇の下にあるツボ「極泉(きょくせん)」を使ったセルフケアについて、科学的な根拠とともにお伝えします。


【2】なぜ五十肩は長引くのか? ── 小円筋・大円筋の癒着と鍼灸のエビデンス

肩の痛みを引き起こす「筋膜の癒着」

五十肩が長引く原因のひとつに、肩の後ろ側にある「小円筋(しょうえんきん)」と「大円筋(だいえんきん)」の間で起きる癒着(ゆちゃく)があります。

癒着とは、本来すべるように動くはずの筋肉と筋肉の間にある膜(筋膜)が、くっついて動きにくくなった状態のことです。

この2つの筋肉の間には「クアドリラテラルスペース(外側腋窩隙)」と呼ばれる隙間があり、ここを腋窩神経(えきかしんけい:肩の外側の感覚や動きをコントロールする神経)が通っています。

小円筋と大円筋の間で癒着が起きると、この隙間が狭くなります。 すると腋窩神経が圧迫されたり引っ張られたりして、肩の外側に痛みが生じたり、腕を上げる動作が制限されたりします。

1983年にCahillとPalmerが報告した研究(Cahill DR, Palmer RE. J Hand Surg Am. 1983)では、この部位の周囲組織が線維化(硬くなること)することで神経が圧迫され、肩の後外側に痛みが出ることが示されています。

また、Steccoらの研究グループ(2010年代以降)は、筋膜内のヒアルロン酸が凝集すると滑走性が低下し、痛みや固有受容感覚(体の位置を感じるセンサー)の異常につながることを報告しています。 小円筋の周辺もこの理論の適用範囲とされており、理学療法分野でも広く参照されています。

さらに、日本の臨床研究では、小円筋と大円筋の間の筋膜に対して薬液を注入する「エコー下ハイドロリリース」を行うと、肩の可動域(特に挙上と外旋)が速やかに改善し、痛みが軽減したという報告が多数なされています。

鍼灸が五十肩の痛みと可動域に与える効果

鍼灸による五十肩へのアプローチについても、科学的な研究が進んでいます。

2020年にBen-Arieらが発表した系統的レビューおよびメタアナリシス(複数の研究を統合して分析する、信頼性の高い研究手法)であるEvidence-Based Complementary and Alternative Medicine論文リンク)では、13件の研究を分析した結果、鍼灸が五十肩の痛みの軽減、肩の機能改善、屈曲の可動域回復に対して有意な効果を示したと報告されています。

この研究では、VAS(痛みの強さを測る指標)やCMS(肩の機能を評価するスコア)を用いた定量的な分析が行われ、短期〜中期にわたる改善効果が確認されました。

また、2024年に発表されたAbdelbassetらの系統的レビューおよびメタアナリシス(Journal of Acupuncture and Meridian Studies論文リンク))では、鍼灸と運動療法を組み合わせた治療が、運動療法単独と比較して、痛みの軽減・臨床有効率・可動域のいずれにおいても優れた結果を示したと報告されています。


【3】鍼灸師の視点 ── 院長・弓削周平の見解

論文から読み取れること

上記の研究結果から、五十肩の痛みや可動域制限の背景には、小円筋と大円筋の間の筋膜癒着が深く関与しているということが示唆されます。

そして、鍼灸による刺激がこの癒着の解消を助け、痛みの軽減と可動域の回復に役立つ可能性が、複数の研究で裏づけられています。

臨床での実感

当院でも、五十肩で1年以上お悩みの患者さんに対して、脇の下にある「極泉(きょくせん)」というツボを中心としたアプローチを行っています。

極泉は、ちょうど小円筋と大円筋の近くに位置するツボです。 ここに鍼やツボ押しで刺激を加えると、脇の後ろ側にある大円筋と小円筋の緊張がゆるみ、回旋腱板(ローテーターカフ:肩を安定させる4つの筋肉の総称)の癒着が少しずつ解消されていきます。

施術後に肩を動かしてもらうと、「さっきより腕が上がる」「痛みの出る角度が変わった」と驚かれる方がとても多いです。

中国・長春中医薬大学での留学時代に学んだ運動鍼(鍼を刺した状態で関節を動かす手法)も、この部位のアプローチでは非常に有効だと25年以上の臨床を通じて実感しています。

ご自宅でできるセルフケア

五十肩でお困りの方は、まず以下のセルフケアから試してみてください。

  1. 痛い方の肩の脇の下に、親指を奥まで深く差し込みます。
  2. 親指を肩甲骨の方向(後ろ側)に向かって押さえつけます。
  3. そのまま人差し指と中指で、脇の後ろにある筋肉(大円筋・小円筋)をつかみます。
  4. ツボを押さえた状態で、痛みのない範囲で肩をぐるぐると10回回します。

回すたびに、肩の動く範囲が少しずつ広がっていくのを実感できるはずです。

毎日続けることで、回旋腱板の癒着が少しずつ解消されていきます。 早い方であれば、およそ1週間で変化を感じられます。

痛みのない範囲で無理をせず、ゆっくり続けてみてください。


【4】ひとりで悩まないでください

\ 無料相談はLINEから /

五十肩のこと、ひとりで悩まないでください。 木もれび鍼灸院では、LINEでのご相談を受け付けています。

👉 LINEで相談する

お気軽にメッセージをお送りください。


【使用したエビデンス一覧】

  • 論文1:Cahill DR, Palmer RE. "Quadrilateral space syndrome." / J Hand Surg Am. / 1983年
  • 論文2:Stecco C, et al. 筋膜のヒアルロン酸凝集と滑走性低下に関する一連の研究 / 2010年代以降
  • 論文3:皆川洋至 著『超音波でわかる運動器疾患 ―診断のポイントと描出のコツ』/ 日本の超音波エコー研究
  • 論文4:Ben-Arie E, et al. "The Effectiveness of Acupuncture in the Treatment of Frozen Shoulder: A Systematic Review and Meta-Analysis" / Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine / 2020年 / DOI: 10.1155/2020/9790470
  • 論文5:Abdelbasset WK, et al. "Efficacy of Combining Acupuncture and Physical Therapy for the Management of Patients With Frozen Shoulder: A Systematic Review and Meta-Analysis" / Journal of Acupuncture and Meridian Studies / 2024年 / PubMed

コメント

このブログの人気の投稿

足三里に鍼灸|緊急事態の備蓄にお灸を加えるべき科学的理由

良性発作性頭位めまい症の再発を防ぐ鍵は「黒キクラゲ」|ビタミンDと鍼灸の視点から解説