正常眼圧緑内障に漢方・鍼灸が効く理由|フラマー症候群と弁証論治を鍼灸師が解説

【概要】

正常眼圧緑内障の原因となるフラマー症候群に対し、漢方の弁証論治で体質別にアプローチ。当帰芍薬散の眼血流改善エビデンスや鍼灸との併用効果を鍼灸師歴25年の院長が解説します。



【本文】


こんな症状でお悩みではありませんか?


正常眼圧緑内障でお悩みの方へ。眼圧は正常なのに視野が狭くなっていく不安を抱えていませんか?点眼薬を使い続けても進行が止まらず、このまま見えなくなるのではと怖くなることもあるかと思います。実は、正常眼圧緑内障には漢方薬・鍼灸による体質改善が効果的とされるエビデンスが報告されています。


研究でわかっていること


2017年にEPMA Journalに掲載された東北大学病院の菊池らの研究([論文リンク](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5486530/))では、フラマー症候群を伴う正常眼圧緑内障の患者に当帰芍薬散を33週間投与したところ、視神経乳頭の血流(MBR値)が右眼で12.5から14.5、左眼で14.3から17.1へと改善し、視野欠損の進行が停止したと報告されています。特筆すべきは、全身の血圧に変動を与えることなく、眼血流のみを選択的に改善した点です。


また、2014年に発表された同チームの研究([論文リンク](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4020465/))では、健康成人12名を対象としたランダム化比較試験(RCT:最も信頼性の高い研究手法のひとつ)で、当帰芍薬散の単回投与により視神経乳頭の血流が約3.6%有意に増加したことが確認されています。


さらに、中国で行われた240例のRCTでは、補中益気湯と百会穴への鍼治療を併用した群の有効率は95.5%と、方剤単独の76.7%を大きく上回る結果が得られています。


2023年に中国温州市で実施された142名の前向きコホート研究([論文リンク](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9763230/))では、中医学的な「陽虚」体質を持つ患者は、非陽虚の患者と比較して視野進行のリスクが4.65倍高いことが明らかになりました。これは体質改善が視野保護に直接的に関係することを示唆する重要なデータです。


ツボ塾の見解


論文の解釈


これらの研究結果から、正常眼圧緑内障の進行には眼圧だけでなく、眼血流の低下と全身の体質的な要因が深く関わっていることが示唆されます。特に当帰芍薬散が「血圧を下げずに眼血流だけを改善できる」という特性は、低血圧を伴うフラマー症候群の方にとって非常に大きな意味を持ちます。


臨床での実感


当院でも、正常眼圧緑内障で冷え性・低血圧・片頭痛を伴う患者さんに対して、弁証論治に基づいた漢方薬の選定と鍼灸治療を行い、冷えの改善や頭重感の軽減が見られるケースがあります。東洋医学の強みは「眼だけを診る」のではなく、「全身の体質を整えることで結果として眼の血流を改善する」というアプローチにあります。


動画でもお話ししましたが、フラマー症候群の弁証論治では主に4つの体質パターンがあります。


1. **血虚血瘀型**(当帰芍薬散):痩せ型・貧血・冷え・月経不順がある方に。最も頻度が高く、東北大学の眼血流改善エビデンスがあります。

2. **気虚下陥型**(補中益気湯):疲労感・立ちくらみ・低血圧が前面に出る方に。百会穴の鍼との併用で効果が高まります。

3. **脾腎陽虚水滞型**(真武湯):極度の冷え・むくみ・下痢をしやすい方に。附子を含む強い処方のため医師の処方が前提です。

4. **肝鬱気滞型**(加味逍遙散):完璧主義・ストレス・イライラが強い方に。三陰交のツボとの併用が効果的です。


患者さんへのアドバイス


正常眼圧緑内障でお困りの方は、まずご自身がフラマー症候群の特徴(冷え性・低血圧・片頭痛・完璧主義)に当てはまるかを確認してみてください。3つ以上該当する場合は、眼圧を下げるだけでなく体質改善のアプローチが有効な可能性があります。ツボとしては内関と公孫が血虚血瘀型のセルフケアとして覚えておくと役立ちます。ただし、体質の見極めを間違えると逆効果になることもありますので、漢方外来や鍼灸院でしっかり弁証を受けることをお勧めします。


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参考文献


1. Kikuchi A, Shiga Y, Takayama S, et al. Traditional medicine as a potential treatment for Flammer syndrome. EPMA Journal. 2017;8:171–175. [https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5486530/](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5486530/)


2. Takayama S, et al. The traditional Kampo medicine tokishakuyakusan increases ocular blood flow in healthy subjects. Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine. 2014;2014:586857. [https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4020465/](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC4020465/)


3. Population-based associations between progression of normal tension glaucoma and traditional Chinese medicine constitutional types. BMC Complementary Medicine and Therapies. 2023. [https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9763230/](https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9763230/)


4. Prinz J, et al. Efficacy of Ginkgo biloba on parameters in glaucoma: A systematic review. PLOS ONE. 2025. [https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0314644](https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0314644)

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