変形性膝関節症のセルフケア|1日30回の膝曲げ伸ばしで痛み改善を目指す鍼灸師解説

【概要】

変形性膝関節症でお悩みの方へ。最新研究では「動かさない」より「痛みのない範囲で動かす」ほうが膝の組織再生を促すと報告されています。鍼灸師が1日30回・1週間のセルフケアを解説します。


【1】こんな症状でお悩みではありませんか?

立ち上がるときに膝がズキッと痛む。階段の上り下りがつらい。正座ができなくなった。

そんな変形性膝関節症の症状にお悩みの方へ。

「軟骨はすり減ったら戻らない」と言われてきましたが、近年の研究では、膝まわりの軟部組織は適切に動かすほど再生が促されることがわかってきました。

この記事では、1日30回・1週間続けることで変化を実感しやすいセルフケアを、鍼灸師の立場からご紹介します。


【2】研究でわかっていること(エビデンス)

「動かさない膝」は軟骨も栄養不足になる

関節軟骨には血管がありません。軟骨の栄養は、関節の中にある「関節液」から供給されています。

2026年に発表された滑膜関節の流体動力学に関する学術報告(参考文献リンク)では、膝を曲げ伸ばしすることで関節内圧が変動し、軟骨内の間質液が押し出されては再び吸い込まれる「スクイージング現象」が起こることが報告されています。

つまり、膝をゆっくり曲げ伸ばしする動作そのものが、軟骨に栄養を送るポンプになっているのです。

反対に、関節を動かさない期間が長くなると、軟骨は拡散だけに頼った栄養供給になり、深層部で代謝廃棄物が蓄積し、変性が進むことが示されています。

「高負荷の筋トレ」が正解とは限らない

「膝が痛いなら筋トレで支えろ」と言われた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし2021年にJAMA誌に掲載された大規模ランダム化比較試験(Messierら、論文リンク)では、377名の変形性膝関節症患者を18ヶ月間追跡した結果、高強度筋力トレーニング群と低強度トレーニング群で痛みの改善度に有意な差はなかったと報告されています(WOMAC疼痛スコア:高強度5.1点 vs 低強度4.4点、p=0.08)。

さらに、高強度群では筋肉痛や関節痛などの有害事象が53件発生したのに対し、低強度群では30件にとどまりました。

膝蓋下脂肪体(しつがいかしぼうたい)という「見落とされてきた組織」

2025年に発表された膝蓋下脂肪体の総説(論文リンク)では、この組織が単なるクッションではなく、関節の炎症や痛みを調節する代謝的なハブであることが明らかにされています。

膝の曲げ伸ばしによって膝蓋下脂肪体が柔軟に変形・移動することは、関節内圧の調整、滑液の分配、そして膝前面の痛みを和らげるうえで極めて重要です。


【3】ツボ塾の見解

論文の解釈

これらの研究から示唆されるのは、**「痛みのない範囲で、膝を動かすこと自体が治療になる」**ということです。

重要なのは負荷の強さではなく、

  1. 関節液の循環を促す「曲げ伸ばし」があること
  2. 軟骨や膝蓋下脂肪体に過度なストレスがかからない「痛みのない範囲」であること

この2点です。

臨床での実感

当院にも「もう治らないと言われた」「手術しかないと言われた」という変形性膝関節症の患者さんが多くご来院されます。

25年以上の臨床経験のなかで一貫して感じるのは、可動域が少しでも増えると、痛みのパターンが変わるということです。

膝を触診すると、痛みが強い方ほど膝蓋骨の下の組織(膝蓋下脂肪体)が硬く、動きが悪くなっています。鍼施術でこの部分の滑走性を回復させ、さらにご自宅で「痛みのない範囲の曲げ伸ばし」を続けていただくと、階段昇降や正座の可動域が段階的に改善していくケースが多いです。

患者さんへのアドバイス

今日からできるセルフケアは2つだけです。

セルフケア①:無重力の状態で膝を曲げ伸ばし(30回)

椅子に深く座り、太ももの後ろに両手を置いて膝を少し浮かせます。その状態で、膝をブラブラとゆっくり曲げ伸ばしします。体重をかけない「無重力」の状態で、可動域を広げることが目的です。

セルフケア②:立った状態で軽く膝を曲げる(30回)

立位で、痛みのない範囲で軽く膝を曲げ、伸ばすときはできるだけまっすぐ伸ばし切ることを意識します。曲げる深さは軽く曲げる程度で十分です。

この2つを1日30回ずつ、1週間続けてみてください。

絶対に守っていただきたいのは、「痛みが出たらやめる」ということです。 痛みを感じる範囲で動かすと、膝蓋下脂肪体の炎症が強まり、かえって回復を遅らせます。


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【5】参考文献

  1. Infrapatellar Fat Pad in Knee Osteoarthritis: A Comprehensive Review of Pathophysiology and Targeted Therapeutic Strategies / 2025 / International Journal of Molecular Sciences / https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC12609914/

  2. Messier SP et al. / Effect of High-Intensity Strength Training on Knee Pain and Knee Joint Compressive Forces Among Adults With Knee Osteoarthritis / 2021 / JAMA / https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC7887656/

  3. Mechanisms of synovial joint and articular cartilage development / 2024 / PMC / https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11105481/

  4. Lin et al. / Impact of low-load blood flow restriction training on knee osteoarthritis pain and muscle strength: a systematic review and meta-analysis / 2025 / Frontiers in Physiology / https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11955650/

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